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社長対談:水越康介氏<8 – 最終回>

(株)トークアイ代表取締役CEO 佐野良太 × 首都大学東京准教授 水越康介氏

考えている自分は身体の上に成り立っている

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佐野:そこはどちらかというと感性というか、あまり理論というのは要らなくて、その五感で感じるものを信じて動かないといけないという面がどうしても残る。頭だけではなかなか習得できないものかなという気がします。

水越:それはそうですね。今回の本では、身体の話というのか、物理的な物の話というのか、実際にやってみることの話は抜けています。どちらかというと(本書では)頭の中で事が済むかもしれないようなアイデアの話になっているところがあります。本当はそうではなくて、考えている自分の前提としてこの身体があるということです。この身体は基本的に物理的な空間の位置を占めているので、相互作用の起点になっている。頭の中で考えていても他人はどう思うかわからないけれど、コーヒーショップで考えればそうした風景自体は目に触れてしまうという、その身体とか物理的な問題、それから、やってみないとわからないよねという話を、もう少し入れないといけないかなと思っていたところです。

佐野:最初の問題提起として、バーチャルな空間ですべてが解決されると思い込んではいませんかという話がありました。人間は身体を持って五感で感じているわけですし、そこから得られる情報とか、そこからの学びというのは、さっきの導感メタファーで言うと、単に脳に電極をつないで得られるモノよりももっとずっとリッチなはずなのです。例えば人と何かを一緒にやることによって、演劇でも何でもいいのですが、得られる気づきとか驚きとか、そういうものの重要性をもう少しマーケティングとかリサーチの中で取り入れていく方法論はないのかなと思います。

水越:そう思います。オブザベーションも何か身体の問題にもかかわるのかなという気はします。その手の演劇系の話で言うと、中原先生と一緒に本を書いている高尾隆先生がご専門です。

佐野:「インプロする組織」ですね。

動きながら考える

水越:高尾先生の授業にも一度出させていただいたのですが、そこでインプロをしました。そうすると実際にやりながら問題を発見するとか、実際に動きながらちょっと考えてみるということをするのです。かなり新鮮な感じがありました。どちらかというと人事系の教育の話になるのですが、人材開発の話ではなくてリサーチとか、あるいはリサーチャーの教育にも使えるのではないかなという気がしています。

佐野:私は一昨年青山学院大学のワークショップデザイナー育成コースというのを卒業しました。そこで約3カ月間いろんなワークショップの企画、運営をみっちりやるのですが、ワークショップを企画するときに頭だけで考えているとうまくいかなくて、実際に身体を動かしてやってみないとちゃんと企画できないという現象が起きるのです。事前に頭だけで考えれば企画ができると思っていた自分にとってはものすごくショッキングな出来事でした。実際に手を動かして、体を動かしてやってみることによって初めて見えてくるものが実はものすごくたくさんあるのではないかと思います。そこら辺を我々はないがしろにしているのではないのかという問題意識はすごくありますね。

水越:実際にやってみると、身体の問題として次の新しい一手を生み出すきっかけになるのだと思います。もう一つ、他人にやってもらうということも、重要なことだと思います。自分で考えている限界を、他人はあまり感じずにやってのけてしまったりとか、全然違うことを始めたりとかするわけですね。これがブレイクスルーになっていて、自分の身体を通じて自分が思う世界の外側に出るというのと、他人にやってもらう、やってみせてもらうということによって自分の外側に出る、そのきっかけがあるのではないかと思います。ワークショップなんかも近いところがあるかもしれないですよね。相手に考えてもらうとか、一緒に考えるのもいいですけども、それは自分では考えられないとか、自分では問題だなぁと思っていたところを相手は無視して議論し始めるわけですよね。

佐野:ワークショップは本質的にそういう偶発性を内包しているので、あらかじめ企図していない出来事が起きます。それをどのように解釈するのかが重要だと思うのです。事前に意図していないことが起きると我々にとってはどちらかというと怖いことなので、できるだけ避けたいという感情があると思います。しかし、何か新しいアイデアを生むとか、新しい驚きを得るには偶発的な出来事をいかに受け止めるかがものすごく重要な気がしますね。

水越:今それをどううまくつくれるかが大事なのかな。

「本質直感」で確信はいつ、どのような形で得られるのか

佐野:予定調和ではない何か新しいことですね。ところで、「本質直観」で確信はいつ、どのような形で得られるのかというのが最後に大きな疑問として残ります。

水越:いつなのでしょう(笑)。よくわからないところはあるのですが、最初とも言えると思いますし、もっと何か話しているときにある瞬間確信するということもあるのかもしれないなと思います。むしろ問い直す中でやっぱりそうだなと思うのかもしれないですし、さっきの話だとその後、実際にやる中で変質していく、そして何かを最後に、ああ、これでよかったのだと確信するということなのかもしれないです。だからこの瞬間とか、こういうときに、とはパッと言えないです。

佐野:そうですね。

水越:もっとそれを言おうとしたり、あるいはどうやれば確信を得られるようになるのかという話になっていくと、例えば石井先生の言うビジネス・インサイトの話に近くなっていきます。対象に棲み込む力を養いましょうとか、ケースメソッドをたくさんやってみましょうとか、そういう話になっていくのかなと。ひとまず、いろいろな可能性があると言っておいてもいいのかなと思います。

佐野:とりあえずやってみるという話があったと思うのですが、やってみなければわからないということの例で、「マシュマロチャレンジ」というグループワークをご存じですか?

水越:マシュマロチャレンジですか、何か積み立てていく?

佐野:スパゲッティとマシュマロを組み合わせて一番高い構造物をつくったグループが勝ちというワークがあります。かつて、大人のグループと子供のグループで競わせてみたことがあるそうです。制限時間があるなかで、大人のグループはまず議論をするのです。どのような形が一番高くできるのかとずっと議論して、最後の何分かで組み立てて失敗する。子供はとりあえず手を動かしていろいろ作ってみる。当然たくさん失敗するわけですが、最後に勝つのは子供のほうらしいです(笑)。「本質直観」の話に戻ると、最後のどうやったら「本質直観」を得られるのかという話にもちょっと似ている感じがします。とりあえずやってみて、それが正しいかどうかは試行錯誤の中でどんどん変容していくのだけれども、最後に何かあるモノができる。そういう子供のチャレンジ精神というか、遊び心に通じるものがあるのかなと思っています。遊びというと何かふまじめなような響きが日本語ではしますけど、実は本人達はものすごく真剣なのです。それに、マシュマロとスパゲッティでつくったものに正解はきっとないと思うのです(笑)。

水越:はい、確かに。

佐野:一番高いものというのをつくるという面では、子供たちのほうが目的は達しているわけで、そこであまり正解を議論してもしょうがないのかなあというような感想を持ちました。本日は長時間お付き合いいただきありがとうございました。

水越:こちらこそありがとうございました。

<完>

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