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マーケッター・リサーチャーのための心理学講座 第1回<心理学とはなにか>

マーケッター・リサーチャーのための心理学講座

心理学というのは基本、最初は個人差への興味

佐野
「マーケッター、リサーチャーのための心理学講座ということで、今月から何回かに分けて、渡邊先生に心理学についてのお話しいただきたいと思います。まずは、心理学とは何か?ということから伺いたいのですが。」
渡邊
「それは学問的な定義ですか、それとも私の考えですか。」
佐野
「両方です。」
渡邊
「心理学史な定義からすると、科学としての心理学の流れは、ヴントヴィルヘルム・ヴントは、ドイツの生理学者、哲学者、心理学者。 実験心理学の父と称される。哲学者のマックス・ヴントは息子である。の『内観』から来た訳です。」
佐野
「内観法ですか?」
渡邊
「民間療法的なものとは別です。ヴントの言う内観は、自分は今なぜこう感じているのかをいちいち分析しましょうというもので、経験主義の一種ですね。」
佐野
「そもそもは骨相学とか、頭の形態的なものから性格が出てくるって話もあります。」
渡邊
「ガルですね。骨相学というのは頭だけを見てこの人は犯罪者かどうかというもので、心理学というのは基本、最初は個人差への興味から出てきますね。」
佐野
「性格の差は、顔や頭蓋骨の形などの形態から何か生まれているのではないか、そこから性格などを推し量ろうというものですよね。血液型も似たようなものかもしれません。(笑)」

マーケッター・リサーチャーのための心理学講座

渡邊
「心理学は個人差研究の流れも強い。それとは別に方法論として、自分がただ思っているだけではなくて、その中にパターンがあるのではないかという事に関して、計測してみようという話が出てくる訳ですね。心理学には色んな分野があって、臨床心理とか発達心理とか、私が専門としている実験心理学とかがある訳なのですが、それぞれ別々の潮流があるし、別々の国でも発達してきたわけです。実験心理学となると、ヴントが始めたと言われていて、そこからいわゆる実証という考え方が出てくるのですが。」
佐野
フェヒナーグスタフ・テオドール・フェヒナーは、ドイツの物理学者、哲学者。1834年からライプツィヒ大学で物理学の教授を務めた。あたりからでしょうか?」
渡邊
「フェヒナーはちょっとかぶっていますが少し前かな。人間を関数と見るみたいな感じで、精神物理学という概念を作り出す訳ですよね。つまり、横軸を物理量で縦軸を心理量にして関数を書くと、例えば光がどんどん強くなっていくと主観である明るさとで関数が書けますよね。その関数を書いたときに、まずそれがほとんどの人にとって同じだと。まぁ、当たり前ですよね。光の量が多くなって、だんだん暗くなっていくと思う人は一人もいない。それを不思議と思うところがまずポイントですね。目とか頭の中に何らかのメカニカルな、機械的なものがあるということで、それが結びつくはずだという考えです。その時代に彼らがすごかったのが、先ほど話した横軸が物理量で縦軸が心理量ということは、物理的な世界と心理的な世界が一対一対応していることを意味する。結構ラディカルな事を言っているのですね。」
佐野
「そのことは、その時代においては自明なことではなかったということですね。」
渡邊
「そうですね、心理と物理で(関数を)書いてみると、『あぁなるほどね、書けるよね』っていうだけの話なのですが、それが意味するところは結構大きいわけです。これは最近になって、私だけでなくみんなが思っていることだと思います。この意味では心理物理関数を書いたというのは革命的だと思っています。」

渡邊 克巳(わたなべ かつみ)

2001年 カリフォルニア工科大学(Caltech)計算科学-神経システム専攻博士課程修了[Ph.D]
2015年〜 早稲田大学理工学術院基幹理工学部表現工学科 教授
専門分野「人間の顕在的・潜在的過程の科学的解明、認知科学・心理学・脳神経科の境界領域への拡張、実社会への還元を視野に入れた応用研究」

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